―今年最後に―



 うがった見方であろうが、厚生労働省は来年度の診療報酬改定の議論の中で、「人材・資源の有効活用と効率化の進展」と称し、人員配置基準の改変・緩和を決定した。
 それは深刻化する一方の介護人材不足に対し、2025年までには100万人の介護職員を増加させる計画を作成はしたが、その数字そして達成が誰が見ても不可能であることが年々明確化することの対応策の一つであろう。
 それは専門職でないとできない事は専門職に、その他の事は一般職で、と機能分けを明確にすることで一部の専門職とその他多数の一般職と業務区分をし、その他多数の一般職を外国からの技能実習生・研修生へと業務分担する布石として改変するような気がする。


Ⅰ.外国人労働者は現状どうなっているのか

1.受け入れ国では
 私どもは施設から下りていくと一大「いちご」生産地の横島地区がある。その地区のいちご生産地は外国人研修生を多く見かけることがある。だが現実を東アジアに移すと国境を超える労働者の群れが大挙して動き回っているのである。
 データは多少古くなるが少し記してみよう。
 韓国、台湾、香港、シンガポールで合わせると77万人(2008年)
   シンガポール  15万人
   香港     24万人
   台湾     13万人
   韓国     1万人
   マレーシア  24万人
このような規模であり、その数は早々増加している。その原因は1980年以降に開始し始めたアジア、NIES地区に於ける経済発展が起因している。その高度経済成長は必然的に労働力不足をもたらし、自国の労働者の総力が必要となって来たのである。女性の活用が必要となったのである。そのため、家事・介護等のケア労働をする労働者も比較的安く、しかも安定的に雇える途上国の女性も必要としたのであった。
 そのためNIES諸国は送り出し国との協定を次々と結び、自国の経済成長の体制をつくりあげたのであった。その結果が大量の出稼ぎ労働者の群れであった。

2.送り出し国としては
 ・フィリピン、インドネシア、ベトナム、中国、スリランカ等であるがフィリピンにおいては2010年前後では500万人の全労働者の約1割の人が外国労働者となりそのうち3分の2は女性であり、そのほとんどが家事・介護などのケア労働者である。その経済力は国のGDPの約1割を占めるにいたり全人口の約半数の家計を支えているほどとなったのである。
 ・インドネシアでは90年の5ヵ年で65万人、95年からの5ヵ年で146万人の海外労働者を産出し、今もなお増え続けている。
 ・ベトナムでは国策として2010年までに100万人を送り出し、その後も国策として送り出し続けている。このことは途上国側からみると失業対策であり外貨獲得の手段でもある。全世界的にみると1258億ドルの仕送り総額が推計されその額は786億ドルのODA総額よりはるかに多いのが現実なのである。
 また、本人、家族側からみると当然生き残りの手段であり、また社会的上昇のチャンス作りでもあった。



Ⅱ. さて課題は

1.受け入れ側の課題
 受け入れ側は当然労働力不足の必要性から受け入れるのであるが、不足の原因は第一に受け入れ国の経済発展でありそれに伴って発生する労働力不足の問題である。そのため女性をも総動員の必要が生まれ、それを保障するため、家事・介護のケア労働者の補充が必要となる。また、我が国のように少子高齢化社会が起因して家事・介護労働力の絶対的不足が生じてくるのである。この様なことで必然的に働き手を海外に求めざるを得ないのである。
 しかし、負の問題として人種差別、性差別を生むことも事実である。家事・介護労働等のケア労働は単純労働であり、何人でも可能な労働であり専門性を必要としない。従って専門性を必要とする労働者の保障としてさえするのである。その担い手が外国人であり、また女性であれば人種差別、性差別を生むのも当然のことであろう。

2.送りだし国側の問題
 確かに海外からの送り主が国民の主たる生活手段になっている途上国もあり、その国では国策として積極的に推進はしている。その結果えてして送り出し国では母親の出稼ぎのため母親のケアを受けられないでいる子どもの存在が社会問題となったりはしている。また、現在はまだ送り出し国となっているフィリピン、ベトナム、インドネシア、中国、スリランカ等のいわゆる途上国もその安価な労働力をもとめ企業進出がされ、その国々に働く場が生まれつつある。
 その結果、中国から発して徐々にではあるが労働単価のアップが進みつつある。それは日本企業にとって「最後の楽園」としてミャンマーと語られたりするほどである。その楽園とは急速な高度経済発展の結果、賃金の上昇等進出企業にとってはそのメリットが減する中でミャンマーがまだ安価なかつ質の高い労働力が存在する地として楽園と名付けられている程である。このようなASEAN諸国の経済発展は現在送りだし国となっている諸国が遠からざして、その役割の変更をせざるを得ないであろう。



Ⅲ. 今私どもが考えなければならない事は

 このような状態であるために私たちは現在もそうであるが、今後ますます困り具合は増していく。介護労働者の附則は当然海外労働者に依存しなくてはならない。いくら介護ロボットの改善が進んだとしても・・。
 そうであれば、現在散見し、あるいは予想できる課題を今の内から払拭しておく必要がある。その課題の第一である差別の問題である。誰にでもできる単純労働で、かつ不足の穴埋め作業であれば、それを差別し、自分の身の優位性に自己満足するのは人の世の常であろう。
 又、現状として経済力落差あるいは貨幣価値の落差が現存することも確かである。また、まだまだ海外出稼ぎ労働者の仕送りで母国の生活を支えている国々がある事も事実である。そうであれば、「技術実習」制度を言葉面だけではなく、真に技術の実習として機能させる事であろう。今のようにただ言葉だけの実習ではなく、3ヵ年の期間の間に実習するスキルを身に付けさせることであろう。現在のEPAによるそれはあくまで技術知識を習得し、免許を取りそのうえで日本に於いて労働をする事を前提としている。
 今、我々が必要なのは「技術研修・技能実習」制度の充実なのではないか。国はその制度を「わが国で開発され培われた技術、技能知識(以下技術等)の開発途上国等への移転を図り当該開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に寄与する」と述べている。しかし現実は「出稼ぎ」なのである。この現実から本来の姿に戻す事こそ、このことが必然的に有す「差別」構造を払拭する鍵となるのではないか。
 なぜならば、超高齢化社会あるいは家庭介護力の崩失による介護の社会化はなにせアジア地区に於いては日本は先進国であり、トップランナーだからです。しかし現在の台湾・韓国がそうであるように遠からずして現在の送りだし国にも出現してくるであろう。今我々は我が国の介護で培われた技術・技能知識を途上国に移転を図る必要が遠からずして訪れることであろう。その為に日本に於いて研修―これであれば研修を受ける側は被差別意識は薄れることであろう。
 さて、問題なのが次である。それは介護の技術と技能・知識を教える体系を我々が持ち得ていない事であり、それを作成し体系的に教える研修制度の一日も早い完成を今必要としているのではないか。それがあれば私どもは積極的に外国労働者を介護研修生として受け入れることが可能となる。仮にそれを持たずに現在のように建前だけの研修生であれば他のNIES国がやっている家事介護のケア労働者としてただ安価な労働力を導入にしかならず、仮にそうしたところで安定的に導入することの保障はないのであろう。かつ本質的に有している差別構造の払拭にはならず人種差別、性差別から職業差別をも露出してしまうかもしれない。
 さて、来年は海外労働者の受け入れ環境の整備に力を注ぎたいものだ。


平成26年12月26日
金澤 剛


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