―今回のテレビ放映で語りたかったこと―

 私は先に、「ただ国の政策の方向性を預言者のごとく分析し、政策の先読みをして己の事業を策定したりする風潮」と書きました。
つい先日のことでありますが、BS11テレビで私どもみかんの丘の自立支援型介護の実践を通して浮かび上がってきた課題…『ガンバル特養が収入減になる』現在の介護保険制度につき、特集とでも言うべき番組が放映されました。
それは私どものこの3ヶ年間の施設運営の現状課題、いや私どものみならず全国老人福祉施設協議会主催のいわゆる竹内プロジェクトにて「おむつゼロ」を達成した全国100あまりの特別養護老人ホーム共通の課題だと思われるが「自立支援介護」の忠実な実践は、必然的に人の手を借りずに生活の実現を可能な限り近づける。そのことはすなわち介護度が下がる=施設側の介護収入に減額が生じる。このサイクルに直面している課題なのである。だが私どもは、このことは、当然プロジェクト開始時にはわかっていた。だがしかし、私どもの社会的役割として要介護状態の少しでもの改善が使命であると感じていたが故に、実践を続けていたのであった。

振り返れば私どもは、今から30年以上前に当時の医療情勢に疑問を持ち、当時の言葉で「地域医療の実践」を合言葉に、全国に展開された「地域医療実践者グループ」=「地域医療懇談会」の流れの一員として 日本の西の端で医療実践を志した青洲会である。当時、日本の西の端、長崎県北松浦郡田平町にてわずか100床の青洲会病院を開設した。
当時、地域医療の実践の必要性から退院患者の訪問診療を実施し、その必要性から訪問看護・介護を自然発生的に実施していた。その医療行為にいわゆる保険点数がつき、病院の売り上げに結び付いたのは実践してから数年後のことであった。当時は収入よりも必要な医療行為と判断して実施したのであった。 有人離島が数多くあり、その島々を結ぶフェリー乗り場の近くにあった青洲会病院は、当然その島々の住民の入院機関として役立っていた。それであるが故に、患者にとって病院への通院はたいへんな時間などをかけてのことなのであった。そのためか、退院患者など 治療の必要な患者も徐々に遠のくのが常であった。そこで私ども病院側が患者のところに出向くのが当然なことであった。それ故に実施したにすぎなかったのだ。
当時の青洲会病院の合言葉は、「いつでも どこにでも 誰にでも医療を」であった。今私どもは、あれから何年…いや何十年経ってもこの志しを忘れず、実行できていることに誇りをもっている。
これが青洲会なのであろう。
これが「みかんの丘」なのである。
これが「陽光」であるはずなのである。


だがしかし、今回の診療報酬改定もそうであるが、改定の解釈がおはやりである。
いつの日からか、医療行為は医療政策にいかに従うかが経営の最大のポイントになってしまったのである。それは当然、行政当局の長年にわたる診療報酬改定を最大の武器として使用してきた政策誘導の賜物であろう。医療経営はその政策誘導に従わなければ経営そのものが成り立たなくなってきていることは事実であるが、その流れが介護業界にも定着しているのである。
私はそのことに異議を申し立てているのではない。ただあたかもその政策誘導が全てであり、いかにそれを着実に実施実行するのがすべてであるかのような医療経営、介護施設経営に疑問を呈しているのである。その結果、私どもが一番大切にあるいはすべてであるべき理念そのものを喪失し、国が定めたかくあるべき介護か医療が理念であるかのような風潮に問題を感じているのである。医療あるいは介護は、たしかに現象的には時の政策を横目で見ながら経営をすることは当然のことである。だがしかし、本質的に医療・介護は時を越えた本質的な部分を含んだしごとである。そのことを時として忘れ去り、国が定めた「ニンジン」の方向に走りがちなことなのである。しかもその方向性が全てであるかのような「コンサルタント」と呼ばれる三百代言が跂扈し、いかにも〈したり顔〉であたかも経営者の代弁者の如くの発言を現場スタッフに「指導」と称してしている風潮に疑義を感じているのである。違うのである。重要なのは、毎日 利用者と直接顔を合わせている介護スタッフの感性を基礎にした方向性が最重要であり、それを基礎にして方針・方向性を考えることが第一なのである。
ソレにも拘らず、国の政策の解釈を売り物にしている業態などが生まれ出てもいる。それが問題なのである。たとえば、今日の介護にかかわる診療報酬改定は、大幅なマイナス改定である。その中で国は「加算」と称した介護の方向性を指し示した「ニンジン」を要所にちりばめた。すると介護経営者たちは、当然いかにしてその「加算」を取るかに終始している。問題なのは私どもが描くあるいは私どもが良しとする介護があるいはその方向性が「加算」行為と合致しているか なのである。現実的には大筋において合致はしているが、逆転しているのである。私達が描く介護行為あるいはそれを保障する体制の結果が「加算」なのである。それは目的ではないのである。そのことが今、忘れ去られているのである。

今回の私どものテレビ放映で語ろうとしたのはこのようなことなのです。どうか現状を振り返って今の私どもを点検してみてください。

平成27年3月19日
金澤 剛

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