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自立支援 バックナンバー

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ある入所者の自立への道

 私達は、このページに挙げる内容をしばらく一人にしぼり経過を見ていく事にしました。
経過の報告の仕方としては月2回の介護力向上委員会ごとに検討・修正したアセスメントシート、課題別ケアプラン表の提示、及び議事録の引用になります。 2014年3月までは特別な理由がない限り毎週カンファレンスと称し、経過報告と検討を行っていましたので、少々間隔が異なってきます。
個人情報保護には十分配慮して参りますので、個人を特定する記述や、データの入力内容を省略させて頂きます。

ある入所者
女性 要介護5 73歳(平成26年3月現在) 平成26年2月入所
■既往歴
脳梗塞
心臓大動脈瘤解離
■現病歴
片麻痺、高次脳機能障害
■食事
主食/副食 全量摂取
  水分摂取 600㏄
■排泄
便秘あり 3~4日/1回
半身麻痺があるが、手すりがあれば立位は可能。安定している。
後始末は自己にて可能である。ズボンの上げ下げは介助が必要。
尿意、便意ある。日中はトイレで夜間はポータブルで排泄を行う。
昼夜ともに頻尿で夜間も排泄の訴えのため不眠が週に3日ほどある。

■生活上の問題点
人恋しい性格で誰かが常に傍らにいると安心されます。
夜間の不眠、夜間の頻尿、便秘症。(排尿特に夜間は15分おきに訴えあり)
妄想発言あり。

現場で実際に使用していますフェイスシートは次に挙げる内容のように個人情報そのものですので、個人情報保護に基づき省略し、様式の説明に変えさせていただきます。







モニタリングというのは入所者が設定した目標達成に向けて計画したケアプラン通り進んでいるか・・・、そのプランに問題はないか・・・、などを観察・洞察することです。
当施設は、「カンファレンス」という入所者をモニタリングしてきた結果報告し、問題点を提示し、解決する方法を理事長・施設長・主任・生活相談員・管理栄養士・機能訓練指導員・各部署のその日に参加できるスタッフが集い話し合う場を、毎週設けています。
水分摂取面・食事面・運動面など科学的介護の視点から施行の問題点を見つけます。

4月からは今現在行っているカンファレンスに相当する会議を「介護力向上委員会」として月2回になります。

そして今後表示していく、経過を示すものはその会議の議事録をもとにしたものです。

モニタリング期間:(入所日)~2/28まで

■カンファレンス(2/27実施)

・酸化マグネシウム(便秘薬)は入所の時点から中止。排便に関しては便秘ぎみの為、月・水・金にセンナ茶を摂取とする。
・夜間2~3時には起きられて、ナースコールや離床センサーの反応が頻回。就寝時間を遅くしても同時刻には起きられる。
・日中は、よくスタッフの後をついていったり、つきまとう感じだが行事に参加されている時はその活動に集中される。
⇒暇だから、トイレを頻回に訴えられたり、スタッフを呼んだりされると思われるので、何か役割を持たせて集中できることがあればいい。
・半身に麻痺があり、現在の居室ではトイレの手すりが逆で自立行為を妨げていたので、他の方と居室を入れ替える。2/28に実施。
・歩行は朝、昼で5mずつ実施。今後、距離を伸ばしていく。
⇒歩行距離に関しては明確に距離を設定したほうがよい。
・トイレの訴えが多い。(30分おき)。
・入眠は早い時間を希望される。睡眠を≒6時間と考えると夜中に目が覚めて当然である。
・入所前の施設で夜間対応ができない状態とはどのくらいのレベルであったかを詳しく調べてほしい。
・服薬について
現在服用中の薬の中から中止した方がよいものがあるのでは?→主治医に相談後、中止の方向で考える。

・主に不安や緊張の緩和・睡眠の改善・体の異常の緩和に効果のある薬
→集中力の低下、眠気やふらつきなどの副作用
・主に膀胱容量を増加させる。頻尿や尿失禁の症状に使われる。
→口渇、便秘、残尿感、排尿困難などの副作用
 薬はその症状を緩和する力がありますが、あくまでも医薬品であり、必ず副作用があります。過剰摂取や依存による習慣化によって、現在の不安症状を引き起こしている場合があるので、「みかんの丘」では最初から薬に頼るのではなく、基本ケア(水分・食事・排便・運動)の実施で改善できる部分は改善するようにしています。

血圧の状態は安定しないので様子をみて服用を考える。

■食事
主食/副食 ほぼ全量摂取 

■水分摂取 
目標水分摂取量を1500㏄とするが平均1000㏄ほどの摂取であった。

■排泄
排便 3~4日/1回
排尿 頻回。

■歩行 歩行距離を5mに設定して歩行訓練を開始する。本人様、意欲的に取り組まれる。

歩行中は膝折れが多く見られ、麻痺側の足がでないため、もう一方の足の振り出しもうまくできない状態である。
・歩行器歩行訓練 17m実施。
強制的に姿勢を正してみるが自分で保つのは難しい。しかし振り出しの向上はみられる。

■生活の様子
19時頃に入眠され、夜中2~3時には覚醒されている。日によっては浅眠、不眠が続いている。夜間、ナースコール頻回。排泄の訴えあるが、人集めによるものも多い。夕方に帰宅願望あるが強度ではない。排泄介助時に旋回しやすいように、居室トイレの位置が反転となる向かいの部屋と入れ替えを行う。



観察期間:3/1~

■カンファレンス(3/6実施)

薬について
 主治医回診で処方変更。現在4種類のみの服用。
 しかし途中、嘔吐あり、BP204/110。その後下降見られず、主治医指示よりアダラートカプセル服用。また、アムロジピン朝・夕を追加服用。安定するまで毎日BP測定。 

・課題①水分摂取1500ccの達成
   ②夜間不眠の解消

課題①について
 水分摂取量が1000ccに満たない日がある。本日、担当者がユニットに入って1500ccを達成している。気付いたのは昼食終了までに集中して提供し、水分ゼリーを介助で行うと拒否なく摂取される。
↑に関してはもともと人への依存心が高い方なので水分摂取を介助で続けていったら食事まで介助になる可能性がある。他の方法を探し出した方が良い。

課題②について
 歩行距離も伸びてきている(15m)し、日中は手すり拭きやお盆ふきなどの手伝いをお願いして傾眠もなく、排尿の訴えもほとんどない状況だが、夜間はやはり不眠。
歩行に関しては、職員によって実施していない場合があり、(理由としては麻痺側の足が出ないから)その職員もある程度決まっているので、今後はリーダーから直接指導を行う。機能訓練指導員としては足がでなくても反復することが大事とのこと。
夜間不眠を解消するにはやはり水分と歩行。この方に関してはもっと能力があるのですべての項目実施のスピードをあげていってよい。歩行距離ももっと伸ばせる。

・排便に関しては、月・水・金にセンナ茶を提供しているが、-5日の間隔があるので毎日提供に変更。
・トイレの手すり位置の関係で居室移動実施。トイレはズボンの上げ下げに一部介助が必要程度。
・よく生活相談室へ行かれて話をされているが、内容はバラバラ。ただ家に帰りたいという帰宅願望とお子さんの心配が多い。
・ご家族より、夜間不眠さえ解消できれば、週1ペースで家へ連れて帰れるとの話しを頂いている。
※担当者が担当している利用者の目標・課題をスタッフに周知しないと、毎日の仕事がただ過ぎていくだけで、目標や課題を知らないスタッフがケアを怠ることで目標に近づかない。

■カンファレンス(3/13実施)
・前回カンファレンスからの経過報告
 血圧は安定傾向。
現在の課題は変わらず・浅眠とスタッフについて回ること
・水分摂取については1500ccに上げたが浅眠の改善がないので更に2000ccにアップ。
・歩行距離については本人の意欲もあり50m目標にしている。
・キスミレ(ユニットの名前)の活動も一緒にして、意欲的に参加している。

※みかんの丘は6ユニットあります。2階にスズラン(10床)・サクラソウ(10床)・キスミレ(10床)←自立ユニット。3階にヒゴタイ(10床)・ハナシノブ(6床)←ショートステイ用・リンドウ(10床)。
自立ユニットはほとんど介助が必要ない方で、炊飯、体操、外出(週3回)、訓練を毎日強化しておこなっています。

・排便については、センナ茶を毎朝摂取しており、2・3日に1回でている。
・認知症状としては帰宅願望がある。
・夜間のコール内容は、人集め的なものと判断できる。対策として、外出企画に入れて欲しいとキスミレリーダーに依頼中。(しかし、以前外出を長時間したことがあるが疲労感もなく夜間は相変わらず浅眠だった。)
・頻尿はなくなった。←役割を持たせて日中活動しているためと思われる。

以下、上記の内容に関して意見等
・歩行訓練に関してだが、記録上距離が短いのは自分の時だが、左足が全く動かない状況だった。よって歩かせる方法がわからず、距離が伸ばせなかった。どうやったら距離を伸ばせるのか?←歩かせている職員に聞くべき。
・夜間のコールについては、本人との関係性を築いて、帰宅願望・意欲をうまく利用して説得することで改善できる。
・問題は、水分と歩行の目標が達成できていない事。なぜか?
 できていない理由が記録されていないので内容を改善できないし、周知できていないのではないか。
 喉を渇かす環境を作れば水分摂取を促せるのではないか。
・食事摂取量が半分だが、足りない分を間食で補い、合せて水分摂取につなげればよいのではないか。

■食事
主食/副食 3/2~3/8の期間が半分量~8割程度摂取されている日が多い。原因は不明だが、「お腹いっぱい」と言われることが多い。3/9以降は、ほぼ全量摂取されている。
水分摂取 前月は平均1000㏄ほどの摂取であったが、水分ゼリーを介助すると1500㏄は確実に摂取されることがカンファレンスで報告されて、過介護にならない程度で平均1500㏄摂取できるようになる。それでも、日内変動による周辺症状がみられるので、水分摂取目標量を2000㏄にする。

■排泄
排便 3~4日/1回
⇒3/8~センナ茶を毎朝提供に変更する。(オリゴ糖ティースプーン一杯、ファイバー5gも一緒に)
結果、3~4日に1回⇒1~2日に1回となる。

排尿 頻回ではあるが、確実に排尿される。

■歩行
歩行距離を15m、25mと段階的に距離の目標を設定して距離を伸ばしている状態。本人様も意欲的に取り組まれている。3/20時点で朝、昼25mずつ50m歩行訓練を実施している。

歩行状態確認(3/7)
最初の立ち姿勢で足部がつま先立ちのようにまっすぐになっており重心は後方にあり。後半で膝折れがあり、足先が引っかかってしまったら次に足をだす動作が困難である。一度介助し、体幹を起こすと比較的足を出す動作は良好。歩行訓練と平行して体幹の強化も必要と思われる。

歩行器歩行訓練(3/11) 45m
歩行器使用すると右重心優位となるため、左下肢の荷重量は減る印象。右足の着地が定まらないのは立ち姿勢を保つためと思われる。
歩行器を外し後方から介助した方が足を振り出して、再度、地面に着ける動きは安定する。



■内服薬
月初めに嘔吐あり、バイタル測定等で観察していたが、3/16の主治医回診で 血圧・脈拍は安定しているので、アムロジピンを減量となる。3/16~処方変更。血圧測定を継続。

■家屋調査(3月)
家屋調査実施。

■機能訓練
端坐位訓練(3/10)
体幹筋強化のために、骨盤~胸部にかけての前後傾運動実施。指示通りにくく頭頸部の前後屈も入るが誘導かけながら続行。麻痺のない側の力の入りすぎ・麻痺側の力の弱さ、脊椎の変形もあり骨格不良。

関節可動域訓練(3/12)
体幹(背部)と左股関節を伸ばす動作を入念に実施。その後歩行行う。立つ時に麻痺側下肢の突っ張りが強く浮いてしまう。振り出しの際も下肢から体幹伸筋(伸ばす動作に用いる筋肉)にかけて力が入りすぎるため後方への倒れ込みあり。

起立訓練 10回×5セット(3/13)
前方の椅子を支持物とする。左下肢が完全に浮いてしまうため意図的に荷重をかけながら実施。 

■外出
自宅方面にドライブに行く。方向など誘導できるが、ちぐはぐな内容もある。職員と会話途切れることなく話される。感想を聞くと「よかった」と話される。(3/14)

車内では、地元を案内され会話が途切れる事なかった。以前、行かれたことのあるバーベキュー場を憶えておられた。(3/19)

※外出は3回ほどされているが、外出された夜間の様子は、浅眠もしくは完全不眠である。

■生活の様子
午前中は、ラジオ体操、歩行訓練、おぼん拭き等々の活動を積極的に取り組まれている。午後も歩行訓練やできるかぎり離床に努めている。
水分を2000cc摂取するようになったあたりから夕方の帰宅願望の訴えがみられなくなった。夜間の浅眠、不眠は相変わらず継続している。前月は臥床後、深夜2時頃まではナースコールやセンサー反応が少なかったが、最近は臥床後~深夜にかけても頻回にナースコールをされることが多い。





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