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自立支援 バックナンバー

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89歳の男性(要介護度4)

入所経緯
卒業後県庁に勤め早期退職し美術館に2~3年務める。穏やかな性格で、書道は得意だった。
妻のうつ病をきっかけに仕事を辞め、看病を行う。20年ほど前から高血圧で起立性低血圧もあるため血圧変動がある。
難聴あるもその都度の説明で理解でき、視力・言語ともに日常生活に支障ない。H26年散歩中に転倒され頭部打撲。3日後に意識レベル低下しHPへ緊急搬送、右上下肢不全麻痺あり慢性硬膜下血腫にてドレナージ術施行。言葉がでにくくなる。当初は不安が多く不穏・単独行動や危険行為多くあった。
リハビリ目的にてリハビリHP入院となる(この時体重57.3キログラム)。
リハビリHPでは車椅子全介助で見守り、日中はトイレ誘導だが膝折れが出現しやすい。
本人の危険予知や注意不足ありナースコール押されず、数回転倒あった為、ベッド上と車椅子クリップセンサーを使用していた。食事以外の動作ではすべてにおいて介助が必要で端座位時での後方への倒れこみや移乗時の急な膝折れには注意が必要であった。平成26年8月帰宅願望つよくなりリストカットするなど問題行動出現、抑うつ症状も目立つようになる。
内服薬ジェイゾロフトの服用でも改善せず精神科受診し、そこでパキシル、リーマス開始となった。同月に意識障害が増強、採血の結果、高度の低ナトリウム血症にて、輸液での治療が行われた。
パキシルによる薬剤性SIADH疑い、パキシルは中止、禁忌となりジェイゾロフト続行。食事を含めた水分制限となる。入院生活に不満があり、在宅復帰も、主たる介護者である次女は母親の介護も行っており実現困難にて、H27年8月みかんの丘入所となる。
入所時点では麻痺はほとんど見られず。両膝関節拘縮あり、-45°の伸展制限あり。
下肢筋力低下で、起立時、重度の介助を要す。

入所前カンファレンス
事前情報
水分 トロミにて600cc~800㏄
食事 3食1200cal 下義歯の部分入れ歯 主食二度炊き 副食キザミ
運動 リハビリで歩行訓練実施するも膝折れが著明
排便 終日オムツ着用 便意はあるとのこと。
医療 仙骨部に0.5cm×0.3cmの褥瘡あり
   低ナトリウム血症による水分制限あり。
   体重43.4㎏(7月時点)

この情報をもとに・・・

プラン作成
水分 1000㏄に目標設定行い症状などをみていく。
食事 常食の提供を行い、咀嚼・嚥下の摂取状況を観察実施する。
普通椅子での食事提供
運動 歩行訓練の開始(PTにみてもらう)
排便 オムツを外し、布パンへの変更

入所当初
水分で咽ることが度々あり。水分は継続してトロミ対応となる。水分制限に関しては医師と相談しながら血液データを見ながら水分を徐々に上げていく。水分摂取量があがることで低ナトリウム血症による症状はみられない。褥瘡の完治も含めて栄養量が低い為に栄養ムースをつけて対応する。下肢は、麻痺の影響より膝の拘縮の影響があり、起立は中等度介助必要。自分で踏ん張る様子はあるが、耐久性が低いので長時間の立位保持はまだ困難。トイレも二人介助にて対応する。歩行訓練として二人介助にて5mを目標に実施開始。食事中は椅子への移乗も行う。自らの発語は見られないも声かけにて返答はみられる。排便に関しては水分量も低いためにカマグは継続して提供し形状は普通便で排便がみられていた。

入所2か月後
現在の水分摂取量は1300㏄を提供している。今月末の血液データの結果をみてさらに水分量を増加し1500㏄を目標に観察を行っていく。水分量があがったことで活気が出てくる。自ら話しかけてくることも多く見られてきた。食事の楽しみも出てきており、食事レクで実施したさんまの炭焼きも骨だけを残し綺麗に摂取される。食事量も増加し、褥瘡も完治する。食事にムラがあるために栄養ムースは継続して提供している。排便に関しては2日に1回みられている。水分量も増加したためにカマグを中止し、オリゴ糖とファイバーを提供して自然排便を確立していく。歩行訓練は歩行器歩行にて5m→10m→20mと徐々に距離を伸ばして歩行距離が伸びる。歩行訓練も二人介助で実施していたが現在で一人介助でも実施可能となる。背が高いために女性職員の際は2人介助を行っている。歩行訓練以外で生活の移動として歩行器歩行を取り入れていく方向である。トイレ介助など介助量の負担軽減は著明にみられる。

今後
本人や娘さんより晩酌を希望される。今後は外食や居酒屋など本氏の希望を叶えられるよう聴き取りを行いながら、やる気や明確な目標設定を行い、ケアの統一をはかっていく。





※用語説明

・パキシル・・・ ストレスなどが原因で脳内の神経伝達物質であるセロトニンが減少するのを防ぐ薬
・リーマス・・・ 躁病や双極性障害に用いられる

気分が高揚するそう状態、沈むうつ状態、両方をもっていること
・低ナトリウム血症・・・ 血中ナトリウム濃度が135mEq/以下になること
症状:中枢神経系の機能不全
・薬剤性SIADH・・・ バゾプレシン(ADH)分泌過剰症 

(抗利尿ホルモン)が異常に産生され、低ナトリウム血症を来す疾患
 
                   
10/21の日帰り温泉で早速ビールを!(ノンアルコール)、豪華な食事も楽しまれました。

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