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自立支援 バックナンバー

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84歳の男性(要介護度4)

入所経緯
元気な頃はみかんを育てたり、土木仕事をしていた。また、温泉が好きでよく出かけていた。78歳の時に胸部腹部大動脈バイパス手術施行。H25年7月頃より下肢痛、歩行困難になりT中央病院紹介される。腰部脊柱管狭窄症疑いとされ、MRIを予定していたが本人の都合で検査キャンセル。12月30日左下肢蜂窩織炎の為T中央病院入院。H26年2月退院し自宅へ帰る。同月、腰部脊柱管狭窄症に関してK中央病院に紹介されたが、肝硬変、虚血性心疾患、深部静脈血栓症の既往がある為保存的治療とされた。肥満体で腰痛や変形両膝関節痛・両上下肢の腫れがあり身動きが出来ず、家族の希望や介護困難にて、同月、T中央病院へ入院。深部静脈血栓に対してワーファリンコントロール。脊柱管虚窄手術対象ではないと判断されリハビリ目的の為26年3月S病院入院。両下肢は外転尖足状態である。リハビリ施行していたが離床拒否があり一日をベッドで過ごしていた。歩行困難の回復は見られず、病態悪化もない為みかんの丘ショートステイ利用を10月より利用開始となる。11月熱発、両下肢腫脹あり、採血し貧血が進みビリルビン値も高く受診し入院される。12に月ショートステイ再入所。
H27年4月特養入所。同月、尿管結石による腎盂腎炎でA病院入院。翌月には状態も安定し退院となる。

入所前カンファレンス
事前情報
水分 1100㏄
食事 1500cal 病院では離床して食事するとすぐに腰痛の訴えがあったとのこと。すぐに臥床するなど対応できないためにベッド上での食事を提供していた。
運動 終日ベッド。両下肢の可動域は狭いも動くとのこと。
排便 オムツ使用、オムツ内での排尿・排便のために便意・尿意があるのか不明
医療 褥瘡あり。マグミットを服用している。

この情報をもとに・・・

プラン作成(ショートステイ利用時)
水分 1500㏄
食事 1500kcal 離床しての食事提供
運動 離床
排便 下剤使用で様子をみる。

ショートステイ利用当初
ショートステイ利用ということもあり、自立支援介護を積極的に実践できない現状であった。家族も本人もベッドで安楽に過ごすことを望んでいた。みかんの丘では誤嚥予防として食事は離床して食べてもらうことになっていたために食事は病院と違い、離床して食堂にて摂取してもらった(車椅子にて)。離床する際も身体に触れるだけで痛みの訴えがあり、足先に靴下を履くだけで痛みがはしるような状態であった。病院の情報通り、下肢の可動域はほとんどなく離床しても膝がかたまったように伸びた状態であり、フットレストに足が乗せられない状態であった。排便もオムツ内での排便であり、本人も身体の痛みがあるためにPトイレにも移行できなかった。オムツ内での泥状便だったため、臀部のオムツかぶれがひどい状態でもあった。
ショートステイ利用を半年過ぎるまではこのままのケアを継続していたが、病院とちがって離床回数を増やしたことや体操への参加も追加したことで身体にはしる痛みは消失していった。これは身体を動かす機会が増えたことで拘縮の緩和や廃用性によってできた痛みの軽減につながったと考えられる。この結果から、伸びた状態であった膝も自分で曲げられる状態にまでなった。
(しかし入院)
H27.4に特養への入所がはじまった矢先に尿路結石にて入院となる。すぐに帰ってくることができるもマグネシウムを摂らないといけないとの病院の指示でマグミットを毎食後服用することとなる。

プラン変更
水分 2300㏄
食事 偏食あり。カロリーも考えながら栄養が偏らないよう観察・検討を行っていく。
排便 下剤の抜薬。トイレへ座る。
運動 二人介助での立位訓練の実施。サドル付歩行器を使用しての足を出す練習。

特養に入所当初
Y氏の目標を設定する。お風呂が好きということもあり、本人と話して温泉に行く事を目標として設定する。そのためにはトイレでの自然排便を獲得する必要がある。まず水分に関しては平均的に2,200㏄以上摂取できている。排便の形状が緩い為にマグミットを抜薬してオリゴとファイバーで対応する。運動としてベッド上に端座位となり、その前に歩行器を設置する。下肢にまだ力が入らない為にベッドのギャッジを上げてから歩行器をもってもらい、お尻を浮かせてもらう。この方法を二人介助で行い、立位訓練の実施を始める。また、サドル付歩行器を使用して自ら足を出す事をまず目的として実施する。

入所6か月後
排便に関してはPトイレ内での排便が多くみられるようになる(特に朝食後)形状も普通便の形状となり、オムツかぶれも軽減してきた。当初は脊柱管狭窄症のために尿意・便意がないのではと意見もあったが、水分ケアをしっかり実施したことで尿意や便意を訴えられるまでになった。運動に関しても以前はベッド上での端座位からであったが現在は車椅子からの立位訓練を実施。徐々に下肢筋力もつきはじめてきたために膝に力が入り、しっかり立位を保持できるまでになる。現在はPTと一緒に歩行器歩行で2歩を目標に実施している。11月には目標でもあった日帰り温泉に参加し、お風呂に入って満足されていた。

今後
病院生活での寝たきり状態が廃用性症候群を作りだした。自立支援介護を実践することで痛みの緩和やトイレ排便の獲得、また目標であった温泉に入るなど目標の達成ができた。現在は歩行へ移行しつつある。今後も目標を再設定し、ADLの向上につとめていき、QOLを高めていきたいと考える。

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